小さい頃、本当に小さい頃。
僕は剣になりたかった。折れることも知らぬ、強い剣に。
護れないものなど知らぬ、強固な存在に。
今になっては何故そう思っていたかはわかる由もないけれど、
その誰かの為に力を求めていた、かつての自分だけは忘れない。
母は言った。
「人の為に用いる力は尊いものだ」と。
友人は言った。
「力はそこにあるだけで忌むべき存在だ」と。
他人は皆、口を揃えて言った。
「お前の持っている力は悪魔の力そのものだ」と。
どの言葉も私の胸に痛いくらい響く言葉だった。……今の、私には。
しかし、当時の私には今以上に力がなかった。
生まれつき病弱だった私は満足に走ることもできず、
外を走り回る他の子供たちを羨ましそうに眺めていただけだった。
不思議だ。何故こんな人形のように動けない存在が、
誰かを護りたいだなんて思ったのだろう。
人形は動かないから人形なのだ。
動く人形なんて、そんなものただの都合の良い道具ではないか。
私は一体誰を護りたかったのか。
あれは誰の為の力だったのか。
その記憶はまだ、遥か遠く。
心の深淵にて私を待つ。 →次へ